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西研コラム

〈第7回〉マスコミとは“増すゴミ”?


2017年8月30日

最近は環境とかエコというキー・ワードが新聞などでしょっちゅう躍るようになりましたね。中でも EV や HEV の話題には事欠かない。この間も新聞を読んでいて、次のような電池関係の記事を見つけた。某大学でリチウムイオン二次電池用の高性能負極が開発されたという記事で、「12  秒で充電が可能であり、数年内に EV 用などへの応用を図る」と結ばれていた。

 

12 秒充電というのは、300 C、つまり、電池容量の 300 倍の電流で充電するということですよね。たとえば、1 Ah の電池だと、300 A の電流で充電するのが 300 C 充電になる。EV 用の電池だとおおよそ 30 kWh くらいの容量を持った電池が必要とされる。これを 300 C で充電するには、30 kW × 300、つまり 9000 kW の電源が車一台ごとに必要ということになる。我家の東電との契約は 100 V / 30 A、つまり 3 kW で、隣近所(では間に合わないから、町内会全体)の 3000 千軒から電気を借りてこないといけない。充電ステーションに設置するとして、10 台分揃えると、9 万 kW の電源が要ることになり、その充電所は自身で発電所を準備しなければならないほどで、どう考えても現実的ではない。

大学の電池研究は、せいぜい、数 mAh 程度の小さな電池を作ってデータを取る。このくらいの電池だったら 300 C と言っても、せいぜい 1 A 程度の電流ですんでしまう。少し考えを巡らせれば、そのデータを EV などに使う電池に拡大できないことは分かるはずだ。マスコミがいかに不勉強であり、怠慢かが分かる。
ちょっと話題を変えて、政治の話をしますよ。少し我慢して読んでください。
日本は三権分立の国家であることは誰もが知っている。知らないのはおそらくマスコミくらいだろう(あるいは知っているのに知らないフリをしている?)。というのも、例の閃閣列島問題で中国人船長を釈放した際、「あれは検察の判断であって、政府は関与していない」という首相や官房長官の発言をマスコミが鵜呑みにしているのはおかしいと思うからだ。

 

なぜなら、検察庁は、行政(政府)、立法(議会)、司法のうちのどれに属するかと言えば、行政になるからだ。検察庁は法務省すなわち法務大臣の管轄であり、法務大臣は内閣の一員であって、ゆえに、検察は最終的には内閣の長である首相のコントロール下にある。では、司法は何かと言えば裁判所であって、これは行政府と立法府が手出しできない領域というのが建前。裁判所は内閣にも属さないし、議会にも属さない独立した存在だ。だから、三権の長というのは、首相(行政)、国会議長(立法)、最高裁長官(司法)であって、最高検長官というのは出る幕がない。

 

だから、閃閣事件の船長釈放は検察の判断というのなら、それは最終的には首相の責だということになる。それはそれとして、ここで言いたいのは政治の問題ではなく、マスコミが正論を吐かないということなんです。閃閣問題でも、上に書いたような正論を展開すべきなのだ、誰もそれに触れない。数年前のことだが、六本木タワーで子供が回転ドアに挟まれて死亡するという事故があった。あのとき、マスコミはビル管理者と回転ドアのメーカーをボロクソにやっつけていた。 しかし、ビル側はアルバイトを雇ってドア付近に立たせ、「危険だから、小さな子供は手を引いてドアに入るように」と呼びかけていた。だが、ほとんどの親は、子供が回転ドアに一人で駆け込むのを傍観していたという。だから、最も非難されるべきなのは、ビル管理者でもなければドア・メーカーではなく、親だった。「親が悪い」というのが正論なのに、マスコミは一切それには触れなかった。「遺族の神経を逆撫でするから」というのがその理由だというが、親の責任を言わなければ、同じような親の怠慢による新たな事件が起こるだろう。もう一つの要素に、マスコミが読者に迎合しているというのがあるだろう。回転ドアの件でも、親の責任を問うより、有名なビルや大企業を糾弾するほうが新聞の読者やテレビも視聴者に受けるのだ。

冒頭に紹介した記事も、今や EV と書けば読者受けすると思ってのことなのかなと勘ぐってしまう。世間に受けるという意味では、「コラーゲン」などは典型だろう。コラーゲンが「お肌プリプリ」に効果があるなどというのは飛んでもない嘘っぱちなのだが、女性が喜ぶからいつまでもウソを並べているのだろう。コラーゲンはタンパク質だ。タンパク質は体内に入るとアミノ酸に分配される。アミノ酸はおよそ 7 割は燃焼されてエネルギーとなる。残りは再編されてタンパク質になるのだが、そのとき元のタンパク質に戻るということはほとんどない。だから、コラーゲンを摂ったからコラーゲンが増えるということはあり得ない。もし、元のタンパク質になるとしたら大変だ。だって、牛タンを食べたら二枚舌になってしまうではないか。ついでに書いておけば、コラーゲンを顔などに塗っても役立たない。皮膚から浸透できるのは分子量が 50 位まで。コラーゲンは数十万の分子量を持つから皮膚に取り込まれると言うこともない。アルアル大辞典の納豆はケチョンケチョンにマスコミから叩かれたが、コラーゲンについては各マスコミもお先棒を担いでいる。マスコミの女性への迎合とともに、勉強不足もあるのだろう。コラーゲン信者の方、一度、医師や栄養学者の書いたものをお読みになって下さい。

よくある例なのだが、マスコミの怠慢ぶりが腹立たしいのは、著名人とか大企業が不祥事などで告発され、訴訟になったとき。記者はとうぜんコメントを取りに行く。すると、返ってくるコメントは、「まだ訴状をみていないので、現段階ではコメントできない」というもの。これで話が終わってしまうから、怠慢だというのだ。なぜ、翌日あるいは数日後でもいい、「もう訴状を読んだでしょうから、コメント下さい」と追っかけないのか。それをやらないから、「今はコメントできない」と言っておけば安全だと思われてしまうのだ。新聞でもテレビでも、みなこのような尻切れトンボ状態で話を打ち切ってしまう。

 

マスコミの流すニュースは、かくのごとく、勉強不足、怠慢、読者への迎合、正論無視などに満ち満ちているから、受け手であるわれわれは常に“突っ込み”を入れないといけない。そのまま受け入れていると、われわれの知識はゴミだらけになり、マスコミというのは“増すゴミ”という意味だったのかと思われてしまう。


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