EHS総合研究所

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〈EHS研究所 コラム9〉国連気候変動枠組条約第26回締結国会議(COP26)への期待


2021年11月2日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

「国連気候変動枠組条約第26回締結国会議(COP26)への期待」

6年前に国際合意したパリ協定、確実に進展するだろうか?
地球の平均気温の上昇は1.5℃以下に抑えることができるだろうか?

 

 

背景

10月31日から11月12日まで、英国のグラスゴーでCOP26が行われます。前半には岸田首相など各国の首脳級が参加しスピーチを行います。実際にはCOP26と言っても、関連する京都議定書締約国会合(CMP16)・パリ協定締約国会合(CMA3)が併設して行われます。原則として毎年実施されていますが、下記に示す節目となる会議で取り決めが行われてきました。

 

① COP1
1995年にドイツのベルリンで行われ、気候変動枠組み条約が締結し、最初の会議となりました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はこの会議に向けて、1994年に特別報告書を発行していました。

② COP3
1997年に京都で行われ、京都議定書が発行されました。大気中の温室効果ガスの濃度を安定化すること、そして、先進国に法的拘束力を持たせることに合意しました、画期的な会議でした。

③ COP21
2015年にフランスのパリで行われ、京都議定書後の新たな枠組みを決める節目の会議でした。IPCCの第5次報告書が2013年~2014年に公表され、後述しますカーボンバジェットに関する報告が行われ、欧米の投資家、企業、自治体等が積極的に政府を後押しし、バリ協定が決定しました。その後パリ協定は異例の速さで多くの国の賛同により締結しました。

 

今回のCOP26では、いくつかの重要な点があり、期待もしています。

 

 

COP26のポイントと期待

CMA3、COP26では、いくつかの争点がありますが、パリ協定で目標として合意された「工業化前からの気温上昇を2度未満に抑え、1.5度以内にするよう努力する」に向かって、有効な決定が行われることを期待しています。
特に関心があるのは、各国のNDC(国が決定する貢献)の引き上げに関してです。

現在の各国のNDCのままでは、2030年の温室効果ガスの排出量は、2010年比で16%増加するとの分析結果を条約事務局が公表しています。パリ協定で目指す気温上昇を1.5度以内に抑えるためには、IPCCは2030年に2010年比で45%減少させる必要があるとしています。日本は4月に気候サミットで目標を2030年46%減(2013年度比)を公表していますが、まだ国連に提出しているNDCは改訂していません。日本も含めて各国に対して、NDCの大幅な引き上げが求められることになると思います。

非常に厳しいことだと思いますが、各国のNDCがパリ協定の目標に近づくように引き上げられることを期待します。
COP26の結果については、次回コラムで紹介したいと思います。

 

 

参考:カーボンバジェットについて

2013年にIPCC第5次評価報告書WG1政策決定者向け要約(SPM)において、人為起源の二酸化炭素の累積排出量が世界平均気温の上昇量と比例していると公表しました。気温上昇を2℃未満に抑えるためには、二酸化炭素以外の温室効果ガスを考慮すると、累積排出量を2900~3300 GtCO2未満にする必要があるとされました。これが総カーボンバジェットと呼ばれます。2011年までにすでに1890GtCO2排出されており、残された排出許容量を「残余カーボンバジェット」と呼ばれます。2021年に公表されたIPCC第6次評価報告書SPAでも、比例関係については図1のように示され、2019年までの累積CO2排出量は2390(±240) GtCO2であり、残余カーボンバジェットを表1のように示しました。高い確率(83%)で気温上昇を1.5℃に抑えるための、残余カーボンバジェットは300 GtCO2しかありません。現在の排出を続けると、2030年ごろには残余カーボンバジェットがなくなってしまいます。

 

図1.累積排出量と世界平均気温の上昇との関係
出典:気象庁暫定訳(2021年9月1日版)

 

 

表1.残余カーボンバジェット推定量

出典:気象庁暫定訳(2021年9月1日版)

 

 

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