<情報セキュリティ通信Vol.83>サイバー攻撃発生時に備えるためのフォレンジック
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<情報セキュリティ通信Vol.83>サイバー攻撃発生時に備えるためのフォレンジック

公開日:2025.11.12

技術士(経営工学・情報工学)
情報処理安全確保支援士 杉浦 司

サイバー攻撃発生時に備えるためのフォレンジック―いざという時の証拠保全―

フォレンジックとは何か

フォレンジックとはサイバー攻撃や情報漏えいなどのサイバーインシデントが起きた場合に、その原因を特定し、再発防止や法的対応のための証拠を確保するための調査活動をいいます。特に、最近被害が増えているランサムウェア攻撃を受けた場合に、あわてることなく、適切な事後対応を行えるように準備しておくことが不可欠になってきています。

なぜフォレンジックが必要になるのか

フォレンジックが必要となる理由にはいくつかあります。サイバーインシデントが起きた場合、当然、速やかな復旧と事業再開をめざすことが求められますが、被害状況を把握してその原因を究明し、何が起きていたのかを示す「証拠」を保全しておかなければ、不正行為者を特定して責任を追及することも、サイバー保険に入っている場合は損害賠償金など損失補償してもらうことができません。

事故発生時に実施すべきフォレンジック対応手順

ランサムウェア攻撃などサイバーインシデントが起きた場合に実施すべきフォレンジックとしては、以下のような対応手順が考えられます。

段階 主な目的 実施内容(例)
①初動対応 被害拡大防止 感染端末の隔離、ネットワーク遮断、影響範囲の特定、証拠保全(スナップショット・ログ退避)
②証拠保全 証拠の改ざん防止 ディスク・メモリイメージの取得、ログ・監査証跡・通信履歴のバックアップ、取得経路の記録(チェーン・オブ・カストディ)
③分析・原因究明 侵入経路・攻撃手法の特定 感染経路解析(メール・脆弱性・RDP等)、マルウェア解析、C2通信確認、アクセス権濫用調査など
④影響範囲特定・復旧支援 被害範囲の限定と復旧計画 暗号化対象データ・漏えい範囲の把握、復旧可否の判定、再発防止策策定
⑤報告・再発防止 社内外への説明責任 経営層・顧客・関係当局への報告書作成、セキュリティ改善計画策定

事前に調査しておくべきフォレンジックの依頼先

証拠保全などフォレンジックには専門的な知識やスキルが必要となるため、ユーザ企業自身で対応することが困難です。フォレンジック調査を専門に行うベンダーは、インターネット上で容易に見つけることができます。最近では、SOC(セキュリティ・オペレーション・センター) やXDR (拡張ディテクション&レスポンス)といったセキュリティ支援サービスを提供している業者の多くがフォレンジックサービスを提供し始めています。

高額なフォレンジック費用と保険活用

対策が求められるフォレンジックですが、その依頼費用が高額なため躊躇する企業が少なくありません。小規模(端末数台・限定調査) なもので数十万円規模、大規模(サーバ群・漏えい調査)では数百万円〜数千万円かかるとも言われています。そこで活用したいのでサイバー保険です。サイバー保険では損害補填だけでなく、このフォレンジック費用をカバーしてくれることが一般的です。

まずはフォレンジックについて知ろう

サイバー保険業者に相談すれば、フォレンジック支援についても解説してくれます。まずは、情報を収集するところから始めて、「攻撃を受けても立ち上がれる企業体力」を確立することをめざしませんか。

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