〈EHS研究所コラム60〉蛸壺組織からは、適正なカーボンニュートラル商品は生まれない
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〈EHS研究所コラム60〉蛸壺組織からは、適正なカーボンニュートラル商品は生まれない

公開日:2026.03.23

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

蛸壺組織からは、適正なカーボンニュートラル商品は生まれない

カーボンニュートラルはバリュー・チェーンすべてが関わらなければ達成できません。
蛸壺化した組織からは、適正なカーボンニュートラル商品は生まれません。

 

背景
前回のコラムで、カーボンニュートラルに関しての取り組みは、周りを見ないと無駄な工数と費用を掛ける可能性があり、サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラル製品の開発・販売、カーボンニュートラル製品の調達、GHG排出削減など担当する方々が適切に情報交換していないと無駄な費用と作業が発生すると記しました。それぞれの取り組みの関連に関して述べたいと思います。
カーボンニュートラル製品を購入したいと考える有力な顧客は、脱炭素経営を進める企業であり、バリュー・チェーンに対して何らかのGHG排出削減を進めていることが考えられます。顧客の活動を理解し、効果的なカーボンニュートラル製品開発を進めることが望まれます。
 

カーボンニュートラル商品と顧客のGHG排出の関係
製品のライフサイクルGHGと顧客のGHG排出の関係を図に示しました。
 

図.製品のライフサイクルGHG排出と顧客のGHG排出の位置付け

 
製品のカーボンニュートラル化をクレジットによって行う際には次の点で注意が必要です。
 
①製品使用時の電力発電によるGHG排出
製品使用時のライフサイクルGHGの算出時は一般的な電力の使用を想定し、カーボンニュートラル製品と主張する場合、それを再エネ電力証書などでオフセットすることが考えられます。しかし、脱炭素経営を進めている顧客では、再エネ電力を利用するなどGHG排出が少ない電力し、購入している電力によるGHG排出をオフセットしていることも考えられます。カーボンニュートラル製品提供のために、使用時の電力をオフセットして、それを顧客に対して価格転嫁するのは、慎重に考えた方が良いでしょう。
 
②製品の回収・再資源化時のGHG排出
使用済み製品を顧客から回収し、その後のGHG排出をオフセットするなら、顧客はScope3の算出対象から外すことができますので、顧客にとっても有効でしょう。ただし、リースで顧客に提供している場合は、元々、顧客のScope3の算出対象ではなく、資産としての所有者であるリース会社の算定対象ですので、オフセットの価格を顧客に転嫁することは慎重に考えた方が良いでしょう。
 
③原料採掘・素材製造のGHG排出
顧客にとってScope3 cat.1に該当するので、カーボンニュートラル製品であれば有効ですし、この部分のGHG算出は顧客よりも製造者の方がデータの追跡が容易です。カーボンニュートラル製品には価値があります。ただし、リースで顧客に提供している場合は、リース会社の算定対象となるため、オフセットの価格を顧客に転嫁することは慎重に考えた方が良いでしょう。リース会社にとって有効となるかはリース会社と意見交換する価値があると思います。

 
製造企業のカーボンニュートラル活動とカーボンニュートラル商品
製造企業が行うカーボンニュートラル活動は、CDP情報開示 、SBT の達成、GX-ETS(GXリーグにおける排出量取引制度) 等によるカーボンプライシングと電力価格の上昇、資源制約対応とGHG削減のためのサーキュラーエコノミー活動など、必要性も実現に向けた活動も活発になってきています。
純粋にGHG排出をニュートラルにできれば問題はないのですが、過渡期にはカーボンクレジット等によるオフセットが必要なことがあります。その際に制度によってはカーボンクレジットの利用が制限されます。例えばGX-ETSでは超過削減枠と適格カーボンクレジットとしてJ-クレジット及びJCMクレジットしか認められていません。SBTではオフセットクレジットの利用は認めていません(過渡的に削減貢献量の検討中)。カーボンニュートラル製品を販売する目的だけで、企業にとっては認められていないカーボンクレジットを利用するよりも、製品提供企業としてのカーボンニュートラル活動に寄与するものを利用した方が効果的なのは明らかです。カーボンニュートラル製品を販売目的で検討とする場合も、企業としてカーボンニュートラルに向けて活動している部署と密接に情報交換することが望まれます。
本来は企業のカーボンニュートラル活動からカーボンニュートラル製品が生まれ、それが市場価値となり製品の競争力が向上する。それが望ましい形です。企業としてカーボンニュートラル活動を進める方も、過渡的に顧客に役立つ活動(カーボンオフセットも含めて)について販売部門や顧客と情報交換をして進めることが望まれます。

 
まとめ
企業のカーボンニュートラル活動をカーボンニュートラル製品の開発に結び付けるのが望ましいです。しかし過渡的には様々な制度への対応が必要です。脱炭素経営を進める本社部門、製品開発部門、サーキュラーエコノミーを進める部門、資材調達部門、電力調達部門、販売部門が蛸壺化せずに、カーボンニュートラルに関する将来動向や顧客の要請を把握し、正しく意見交換を行い活動されることを期待します。


[i] CDPについて – CDP

[ii] 野心的な企業気候行動 – 科学的目標イニシアチブ

[iii] 排出量取引制度(GX-ETS) | GXリーグ公式WEBサイト

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