〈EHS研究所コラム65〉建築物LCAで重要視される「エンボディドカーボン」
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〈EHS研究所コラム65〉建築物LCAで重要視される「エンボディドカーボン」

公開日:2026.08.21

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

建築物LCAで重要視される「エンボディドカーボン」

建築物のLCA開示は欧米での規制化とともに、日本でも2028年から義務付けられます。
これまでは製品使用時のGHG排出が重要視されてきましたが、使用時以外の「エンボディドカーボン」の重要性が高まっています。

 

背景
LCAの変化に関しては、本コラムでも2度掲載しました。いずれも化学物質管理に関しての扱いについてでした。最近欧州で規制検討が進み、日本でも導入が検討されている建築物LCAにおいて、エンボディドカーボン(Embodied Carbon)の重要性が増しています。エンボディドカーボンは、運用で排出される温室効果ガス(GHG)排出を除いた輸送や建設、修繕、廃棄・リサイクルなどからのGHG排出です。重要性が増した理由と、今後の対応に関して示します。
 

重要性が増した理由
エンボディドカーボンが重要な理由は、主に次の4点です。
建築物を例として示していますが、家電製品を含めて耐久性のある製品に関しても、ほぼ同様と考えられます。

  • ①省エネ開発によりオペレーショナルカーボンの比率は低下している。
    建築物に関しては照明のLED化や空調設備のエネルギー効率向上により、オペレーショナルカーボンの排出は低減されており、ライフサイクル全体の排出に占める割合は低下しています。
  • ②オペレーショナルカーボンは購入者の再エネ導入などで改善できる。
    オペレーショナルカーボンは例えば電力使用設備であればスコープ2のGHG排出であり、購入した製品の省エネ性能が影響するものの、製品購入後の購入者が利用する電力の排出原単位で決定します。再エネ電力を調達利用すれば大幅に排出量を減らすことが可能です。
  • ③再エネ電力の比率は高まっている。
    電力の再エネ比率は高まっています。IEAの資料では発電電力量に占める再エネ比率は、2023年でドイツは53.3%、英国は46.6%、フランスは27%(原子力を加えると91%)です。日本は22.9%(原子力を加えると31.4%)で低いですが、再エネの主力電源化に向けて進めており、2040年には4~5割程度が見通されています。オペレーショナルカーボンは、製品の提供者が設定したものではなく、購入者が評価すべきと判断した時期で評価されるのが望ましいでしょう。
  • ④エンボディドカーボンは製品の購入時点でGHG排出量が決定する。
    建築物のエンボディドカーボンの大半は、材料の採掘・運搬、建材の製造・運搬、建物の建設で、建物を購入した段階でGHGは排出されてしまっています。従って購入の判断は非常に重要です。

 

建築物LCAのスケジユール
(1)EU
EU加盟国は、建築物のエネルギー性能に関わる欧州指令により 2028年から1,000㎡超の新築建築物のライフサイクルカーボンの算定・公表が必要です。2030年1月以降は、面積による免除がなくなり、全ての新築建築物が対象になります。既に現時点で欧州9か 国でエンボディドカーボンやライフサイクルカーボンの算定を義務付ける制度が導入されています。

(2)米国
①カリフォルニア州ではグリーンビル基準において、2024年の既存躯体の再利用、低炭素材の使用、LCAの実施のいずれかを選択し、エンボディドカーボンを削減することを義務付けています。LCAを実施する場合には、基準モデル比10%以上のエンボディドカーボンを削減することが必要です。
②ニューヨーク州は一定規模以上のプロジェクトに建材数量とEPDの報告を求め始めました。
③北米の不動産・建築市場では、環境評価システムであるLEED認証において、2025年から主要建材の資材製造段階のエンボディドカーボンの評価を必須項目に加える方針です。

(3)日本
国土交通省の「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」 の「建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)の削減に向けたロードマップ」で、主なものは下記のようになっています。
①LCCO2算定ルール、評価基準の作成・公表(2027年)
②第1ステップ LCCO2評価の実施、自主的削減(2028年)
③第2ステップ LCCO2評価の一般化、削減策の措置(2030年代)

少し先のように見えますが、大手不動産事業者等においては、遅くとも2028年よりScope3開示が求められる見込みですので先進企業では早く進むでしょう。サプライチェーンでの準備は、さらに早く必要になるでしょう。

 

購入者の必要な対応
建築物は寿命も長く、購入者にとっても長期使用の観点から使用時の省エネ性能に重点が置かれていたかと思います。
しかしながら、前述したように運用時のGHG排出削減は、購入後の再エネ導入により可能ですので、購入時にGHG排出が決定してしまうエンボディドカーボンが重要視されるのは当然の流れだと思われます。工場での設備やオフィスで利用する機器や設備に関しても同様ですし、耐用年数の長い家電製品に関しても同じことが望まれます。


[i] 建築:建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会 – 国土交通省

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