〈EHS研究所 コラム52〉必要性が高まるグリーン調達・購入
Share Facebookでシェア

〈EHS研究所 コラム52〉必要性が高まるグリーン調達・購入

公開日:2025.07.23

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

必要性が高まるグリーン調達・購入

カーボンニュートラルおよびサーキュラーエコノミー社会への移行は、

適切な消費行動の全面的な普及・拡大が不可欠。

国際的にも近年これまで以上に必要性が高まっている。

 

 

背景

「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」が2000年に制定されてから25年経過しました。当時は循環型社会の形成のためには、「再生品等の供給面の取組」に加え、「需要面からの取組が重要である」という観点から、循環型社会形成推進基本法の個別法のひとつとして制定されました。目的を十分に果たせているかは多くの疑問があると思います。しかし、近年、過去にないほどグリーン調達・購入の必要性は高まっています。

カーボンニュートラル社会と循環経済社会は、大半の製品・サービスと組織・企業がカーボンニュートラルと資源循環を達成していなければ実現できません。すべての製品・サービスが対応されたものとなるためには、厳しい規制、経済活動に影響する強度のカーボンプライシング制度が必要です。しかし、もう一つの道筋として、グリーン調達・購入の大幅なその前にカーボンニュートラルに向けた製品・サービスが優先的に調達利用され、最終製品に活用、消費者が選択する社会が進めば、厳しい規制やカーボンプライシング制度による経済への影響は少なくできます。グリーン調達・購入の拡大を進めている制度をいくつか紹介します。

 

企業や政府のグリーン調達を進める制度

1)グリーン購入法の改訂

これまでは個々の製品・サービスに対して対象となり基準が定められていましたが、共通の判断基準を設定されることになり、「原材料に鉄鋼が使用された物品」の判断の基準が定められました。一般社団法人日本鉄鋼連盟作成の「グリーンスチールに関するガイドライン」の手続きに従って削減実績量が付されたものが対象となります。

 

2)プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律

「プラスチック使用製品設計指針」において、あらゆるプラスチック使用製品の製造事業者等の皆様が取り組むべき事項及び配慮すべき事項を定めています。それにより製造されたプラスチック使用製品(認定プラスチック使用製品)が認定されるようになり、グリーン購入法上で配慮されることになりました。

 

3)資源有効利用促進法の改訂

認定資源有効利用・脱炭素化促進製品の調達に関する事項が新規に規定され、グリーン購入法上で十分に配慮しなければならないこととなりました。また、事業者及び消費者は、認定資源有効利用・脱炭素化促進製品を使用するよう努めなければならないとされました。

 

4)SBTiの改定案

改訂ドラフトの中に、調達や販売する製品に関して下記の指標が新設されています。

  • 地球規模の気候目標に沿った事業体や活動に向けられた調達の割合
  • ネットゼロに適合した自社の製品やサービスから得られる収益の割合

 

5)GXリーグGX率先実行宣言

脱炭素と経済成長を両立するGX(グリーントランスフォーメーション)を日本全体で実現するためには、幅広い業種での取組が不可欠で、サプライチェーン全体での脱炭素化を推進することが重要となっています。中間需要家・最終消費者と しての立場から、グリーンケミカル等を一定量調達、購入するなどの取組を行うことを宣言する枠組みです。

 

一般消費者のグリーン購入への行動

前述したように企業が原材料調達において、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに優れたものを採用することは重要です。さらにその材料を使用した最終商品を消費者が選択し優先的に購入を進めることにより、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー社会の実現に近づきます。

消費者庁「グリーン志向の消費行動に関するワーキングチーム」がとりまとめた報告書[i]には、「消費者の行動変容に向けたインセンティブをどのように創出していくかという「市場創出アプローチ」が必要であるという考え方が背景にある。これは、グリーン志向の消費行動を、率先的な一部の消費者による取組にとどめるのではなく、全ての消費者が日常生活の中で実践していくことができるようにするために、重要な視点である。」と記されています。

消費者には、「本来、自分の消費が社会経済情勢や地球環境にどのような影響を及ぼすかなどにも目を向けて、より良い消費行動をとることが求められている。循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現においても、循環経済システムの構成員である消費者が、商品・サービスを選択し、使用し、手放すという一連の過程において果たすことができる役割は大きい。」とも記載されています。

 

まとめ

カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーに関しては、政府・投資家の関心も高く、企業の活動も増してきています。原材料調達において資源の再生利用の重要性が認識され、政策と共にグリーン調達への取り組みが増しています。その取り組みが自律的に進むためには、最終消費者の行動が不可欠です。

図は前述の消費者庁「グリーン志向の消費行動に関するワーキングチーム」のとりまとめ報告書に示されたものです。持続可能な社会の実現のためには、様々なセクターが取り組み、グリーン購入とグリーン調達が促進されることが望まれ、様々な活動が盛んになってきています。ビジネス機会となることも考えることが望まれます。

図 「グリーン志向の消費行動に関するワーキングチーム」とりまとめ別紙1

 


[i] グリーン志向の消費行動に関するワーキングチーム取りまとめ

EHS研究所コラムの一覧を見る
各種
お問合せ
はこちら