生成AIはISO等の国際規格については、正しく答えてくれません
生成AIの利用は増加し役立つことも増えています。
ただし、ISO等の国際規格に関して正しく答えることができません。著作権と審議中文書が非公開のためです。
背景
ChatGPT等の生成AIは日々進化しており、様々なビジネス上の相談にも答えてくれるようになってきています。最近では調査研究機関やコンサルタント企業が、調査報告書等の作成に活用したり、キリンHDなどが経営会議にAI役員を導入するなど積極的に活用されています。今後も多くの分野で人に替わって活躍することでしょう。しかしながら、現在は苦手な分野があることと利用する人の能力に左右することもあります。その一つの例として、ISO 等の国際規格に関しては、質問しても期待するような答えが返ってこないことがあります。理由はISO等の国際規格は、一部の例外を除いて、著作物であり、インターネット上等に公開されていないことなどがあります。
規格類の著作権
国によって若干異なりますが基本的には、ISOとIEC が発行する国際規格類は、著作物となり、特に認められた場合を除いて、無断での複製、翻訳、転載・引用等は禁止されています。日本では、著作権法改正により、生成AIには柔軟な 権利制限規定が設けられていますが、基本的には生成AIが顧客からの問い合わせに対して、むやみに翻訳・引用することはできないことがあります。また、生成AIが国際規格の情報をどこから得るのかの点で問題があり、国際規格類はインターネット上に合法的な方法で公開されているものは多くありません。
生成AIがすべての国際規格を購入などにより入手する時期は来るのかもしれませんが、前述のように生成AIも著作物の権利は守らなければならないので、結果をどのように利用するかが明確でない顧客からの問い合わせに対して、顧客が期待するような回答を提示することは困難です。
審議中資料の守秘義務
規格の動向を知りたくて生成AIに聞きたいと考えられている方はいると思います。しかし、残念ながら国際規格を審議する技術委員会(TC: Technical Committee)と、それに対応する国内委員会では守秘義務があり、規格検討に携わる用途以外での開示・配布は認められていません。規格開発動向をまとめてセミナー等で紹介されることはありますが、原則としては、その際の資料は引用や配布は禁止されていることが多いと思います。従って生成AIが正しい情報を適法に入手することは限られます。生成AIに規格の開発動向を聞いても、正しい回答は期待できないでしょう。
生成AIに相談した例
筆者もISOの技術委員会のエキスパートや国内委員会の委員や委員長を務めています。審議中の規格で使用する用語が、他の国際規格でどのように定義されているかを生成AIに聞いてみました。結果は他の国際規格で定義されたものはないとの返事でした。実際には定義されている国際規格がありましたので、規格番号を生成AIに提示して聞くと、次の回答でした。
「その規格では、そのように定義されています。関連する規格の規格番号等をご提示頂ければ、さらに調査を進めます。」
他にも、投票中の規格に関してのコメント作成を生成AIに依頼し、コメントをご提示頂いた委員の方がいらっしゃいましたが、残念ながら投票に対して適切なコメントは、あまりありませんでした。
東大入試問題に関して生成AIの点数が高いことが示されていますが、インターネットに接続できるパソコンを持ち込んで試験を受けているようなものですから当然だと思います。
まとめ
ISOやIECの国際規格は前述のように著作権と審議段階資料の非公開という課題があります。
生成AIはネット上で公開されていれば、調べて回答してくれるので有用なことは多いと思いますが、ネット上に公開されていない情報については、現在は期待できないでしょう。
著作権と審議段階資料の非公開という制約は生成AIに限った課題ではありません。もしコンサルタント企業がISO規格のコピーを、規格の購入を進めずに見せてくれたら、そのコンサルタント企業は著作権について社内教育を怠っているか、コンプライアンス意識が希薄な可能性があります。あなたの個人情報や機密情報は守られていますか。
必要な場合、国際規格は購入するようにしましょう。
[i]スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。
ISOの基礎知識 | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)
[ii] 国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)の略称です。
IECとは | 日本規格協会
