プラスチックの再生利用は進むか?
自動車業界がEUのELV規制の影響もあり、再生プラスチックの活用に関して目標を設定するなど、
再生プラスチックの利用拡大を積極的に進めています。他の産業も再生プラスチックの利用拡大を考える必要があるでしょう。
背景
最終製品での再生材料の利用が市場で受け入れられ、購入が進まないと、資源循環だけでなく、カーボンニュートラルも達成できないことは、これまで本コラムで述べてきました。
一方で食品トレイやプラスチック包装などの削減は気候変動危機やサーキュラーエコノミーではあまり進んでいませんが、最近の中東情勢により、ナフサ由来のプラスチックの削減が検討されています。例えば大手の処方薬局チェーンでは、ポリ袋の利用がなくなり紙袋だけになったりしています。実際にはナフサもガソリンと同様に原油からの産品で、ガソリンの方が産出比率も利用量も多いのですが、補助金が導入されているためかガソリン利用量の削減はあまり聞こえてきません。
ナフサの供給量が不足するかは別として、中東情勢などを原因とするナフサ価格の上昇リスクは避けられません。経済安全保障の観点からは、ナフサの利用量を減らすことは重要ですし、そのためには再生プラスチックおよびバイオマスプラスチックの利用量の大幅な増加は必須です。
再生プラスチックの利用状況
一般社団法人プラスチック循環利用協会の「2024年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」によると、海外からの輸入も含めて867万トンの国内消費量に対して再生樹脂投入量は43万トンと約4%と記されています、使用済み製品排出量は851万t、単純焼却・埋立処理は101万t、有効利用された廃プラ量は810万tですが、マテリアリリサイクル量は180万t、ケミカルリサイクル量23万t、サーマルリサイクル量は608万tで、残念ながら、再生樹脂の投入量の比率を増やすには至っていません。
プラスチックの再生利用に関する政府の規制及び目標
①日本
プラスチックの再生利用に関して、日本は2019年の「プラスチック資源循環戦略」で「2030年までに再生利用を倍増」と定められました。具体的な数量の目標は定められていません。
環境省の検討会では、次の数値が掲げられていますが、政策目標とはなっていません。
・基準年は2020年で約61.7万トン
・倍増の目標から算出すると2030年は約123万トン
②EU
EUでは製品等にPCR(Post-Consumer Recycled material)を使用することを義務付けています。なお、PCRは、市場で使用された製品から回収したプラスチックを原料としたもので、生産工程での端材等は認められていません。ELV(使用済み自動車)規則、PPWR(包装・包装廃棄物規則)などがあります。再生プラスチックの利用に関する部分を下記に示します。
・ELV規則案(2026年2月時点)
再生プラスチック利用目標:規則発効後6年以内に15%
:規則発効後10年以内に25%(うち廃自動車由来20%)
・PPWR第7条プラスチック包装の最低リサイクル含有割合
2030年1月1日以降のプラスチック包装は下表のリサイクル材の含有が必要
表 PPWRのリサイクル材最低含有率の目標
| 包装の種類 | 2030年 | 2040年 |
|---|---|---|
| PETを主成分とする接触包装 (使い捨て飲料用ボトルを除く) |
30% | 50% |
| PET以外のプラスチック材料から作られた接触包装 (使い捨て飲料用ボトルを除く) |
10% | 25% |
| 使い捨て飲料用プラスチックボトル | 30% | 65% |
| 上記以外のプラスチック包装 | 35% | 65% |
日本自動車工業会(自工会)の目標
EU規制への対応や、以前コラムにも掲載した米国のEPEAT への対応のために自主的に再生プラスチックの利用を進めている企業もあります。今後の再生プラスック利用拡大は数社の単独の活動では難しいでしょう。自工会の取り組みは参考になると思います。
「再生材プスチックの活用に向けた自工会の取り組みについて」 では、
・2030年再生プラスチック供給量2.1万トン/年
・2035年サスプラ活用率15%以上
・2040年サスプラ活用率20%以上
となっています。
この目標が示されている「2050年⻑期ビジョン ―⻑期的に⽬指すありたい姿―」として下記が示されています。
まとめ
自工会の取り組みは、目的のひとつとして「自工会が再生材取り組みの方向性を積極的に公表することで、産業界全体の再生材供給・活用を自動車産業が積極的に牽引」が掲げられています。
今後も多くの課題はあると思いますが意欲的で期待できるものだと思います。
自動車産業は下図の輸送分野に属し、自動車以外の鉄道等も含めても、プラスチック消費全体の12%しかありません。包装・容器や電気・電子機器など残りの88%の産業分野も目標を設定して積極的に取り組むことが必要です。

図. 国内樹脂製品消費量(867万t)の分野別内訳
(出典: 一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理区分の状況2024年」)
EUでは規制により、自動車や容器・包装だけでなく、電気電子製品も含めて最終製品が規制対象となっています。
日本では規制的手段を取ることは難しいようで、環境省が2026年2月に公表した「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン」では、推進すべき5つの施策として次のことを示しています。
1.国内資源循環量の最大化
2.技術導入等による資源回収の効率化・質の高度化
3.再プラ拡大設計の実現
4.情報連携基盤を活用した資源循環の透明性と効率性の実現
5.再プラ価値の引き上げ(価値訴求)
5の「再プラ価値の引き上げ」では、「環境価値の可視化による再プラ価値の向上に加え、需要喚起策や認証制度の設計による価値向上も図る。」と記されています。しかし、再生プラスチックの利用が、最終製品である自動車の需要家に伝わる仕組みが必要ではないでしょうか。自動車の場合は購入者に対する補助金が可能かもしれませんが、少なくとも、他の産業の製品に対しては、最終製品の需要家にCFPと共に正しく伝える必要があるのではないでしょうか。
再生プラスチックを利用する製品を販売する企業は、最終製品の需要家に正しく情報を伝えることを考える必要があるでしょう。
[i] EPEAT(Electronic Product Environmental Assessment Tool)電子機器製品が環境に配慮して作られていることを示す環境認証
[ii] 再生材活用促進に向けた自工会の取り組みについてpromote_use_of_recycled_materials.pdf
