EHS総合研究所

Share

〈EHS研究所 コラム13〉「循環経済社会を形成に向けて」
第3回 適切に素材を使用した製品・サービス を「造らせる責任」


2022年3月2日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

「循環経済社会を形成に向けて」
第3回 適切に素材を使用した製品・サービスを「造らせる責任」

 

循環型社会へ移行するためには、政府に役割があることは明確。
政府の「造らせる責任」は何が効果的か?

 

背景

循環経済社会形成に必要なものとして、前回は消費者の買う責任に関して示しました。しかし、脱炭素社会と同様に循環経済社会においても、すべての生産者が変化しなければ目標達成は困難です。そのためには、政府の役割は大きいと思います。政府が「造らせる責任」を効果的に果たすには、どのようなものがあるかを考えたいと思います。今回はコラムとして私見を中心に簡潔に示したいと思います。

政府が循環経済社会形成に向けて行える施策はいくつか考えられます。規制的手段として、企業に対して製品・サービスに基準を設定する、目標を義務付ける、回収・リサイクルに関する制度構築などがあります。また、支援措置としては補助金や減税があります。

 

規制的手段

①製品・サービスに対する基準設定

EUではエコデザイン指令等で規制的に製品・サービスに対して基準を設けており、省エネだけでなく、製品の原材料採取から廃棄までのライフサイクル全般に関しての環境配慮設計を義務付けています。
日本でも資源有効利用促進法の中で、特定再利用業種や指定再利用促進製品等を定めていますが、資源循環に関しては多様な手段と多くの関係者が関与しているので、事業者が判断基準を決めて進めることになっており、政府が基準を定めることは、日本にはそぐわないのだと思います。

 

②目標の義務付け

日本でも省エネ法のトップランナー制度による目標設定があります。達成度の表示と不十分な場合には罰金等の罰則が科せられることがあります。資源循環に関しては、資源有効利用促進法において、一部に再資源化等の目標を定めて推進することになっています。しかしながら、循環経済社会を目指すためには、再生品や再生材料の利用向上は不可欠ですが、脱炭素がカーボンニュートラルに向けて2030年目標を定めているように、資源循環・資源利用に関しても、どの程度向上させることが必要かの議論もなく点から目標を定めることが望まれると思います。企業・製品に対しても目標を設定することも可能だと思います。

 

③回収・リサイクルに関する制度

日本では前述の重有効利用促進法と「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」がありますが、廃掃法は制定から50年を経過し、目的は「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」とされています。排出物は資源循環を前提とした取り組みが求められるなか、性悪説による不法投棄をなくすための規制は根本から見直す必要があるのではないでしょうか。循環経済社会でEUでは廃棄物という言葉をなくすことが論じされています。どのような制度が資源循環を促進できるかの点で見直しが望まれます。

 

支援措置

日本では、補助金や研究開発に関する政府の委託調査研究が脱炭素に向けて行われています。多くは、エネルギー特別会計で実施されています。エネルギー特別会計は、石油炭素税や電源開発促進税などを財源としています。残念ながら、循環経済型社会形成のためにエネルギー特別会計から利用するのは難しいのではないかと思います。元々、循環経済型社会は経済的に成り立つように進める必要があり、補助金や政府からの委託事業に多くを依存することは望ましくないと思います。
減税に関しては、循環型製品・サービスに対して消費税を減税し、促進することは考えられると思います。

 

まとめ

循環経済型社会形成において、政府の役割・効果は大きく期待しています。個人的には、再資源利用に関する目標設定とそれを促進する制度に期待し、廃掃法の全面見直しを望みます。

 

 

 

キャリアパートナーズ

お問い合わせCONTACT