EHS総合研究所

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〈EHS研究所 コラム16〉「化学物質管理法と労働安全衛生規則等の改訂」


2022年6月10日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

「化学物質管理法と労働安全衛生規則等の改訂」

対象物質の拡大やリスクアセスメントの自主的な実施と管理などが必要になります。

専属の化学物質管理専門家の配置など新たな制度も始まります。

 

背景

労働安全衛生規則等の改訂については、昨年7月に当コラムで「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の最終報告の内容を紹介しました。その一部内容が変更されて、今年の5月31日公布されました。一部は公布日に施行となり、多くは2023年4月及び2024年4月に施行となります。また、経済産業省が主管する化学物質による環境への影響を防止するための化学物質管理法の施行規則改訂が今年の3月31日に公布されています。こちらも公布日に施行されている部分と2023年4月に施行される部分があります。改訂の特徴的なものを示します。

 

 

化学物質管理法

①対象物質の見直し

2021年10月20日公布により、対象物質が562物質から649物質に改訂されました。164物質が除外され、新規で256物質が対象となっています。新たに対象となった物質のSDS(Safety Data Sheet:安全データシート)の提供は2023年4月1日施行となります。また、PRTR制度での反映も2023年4月1日施行で、2023年度は新規の対象物質を把握し、2023年度分の届け出は2024年度から行うになります。

 

②届け出様式の変更

様式の変更の主な点は管理番号の導入で、2023年4月1日から施行されます。

 

③PRTR制度(Pollutant Release and Transfer Register)の電子化促進

図1にあるようにPRTR届出の電子届出は伸び悩んでいます。PRTRの個別事業所の排出。移動データは一般の方でもインターネットで閲覧可能となっており、行政手続きの負担軽減と誤作業の防止のためにも電子化の促進が望まれます。今回の改訂に伴い、発信情報・ツールも改善されおり、電子化は届出事業者にとっても作業軽減につながりますので、電子化促進に期待したいと思います。

 

図1.届出方法別届出件数の推移
(出典:経済産業省「化管法の見直し及びPRTR電子化促進について」)

 

 

労働安全衛生規則等の改訂

今回の改訂は、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の最終報告の内容とは異なるものもあり、主な規制項目と施行期日は図2のとおりです。一部について紹介しますが、詳細は環境省の公布資料「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」 を見てください。

 

図2.新たな化学物質規制項目の施行期日
(出典:化学物質による労働災害防止のための新たな規制についての概要資料)

 

①対象物質の増加

2022年2月公布の労働安全衛生法施行令(安衛令)改正で234物質がラベル表示等の義務対象に追加されています。今後は、ラベル表示、SDS等による通知とリスクアセスメント実施義務の対象物質が、国によるGHG分類で危険性・有害性が確認された全ての物質が順次追加されていきます。

 

②リスクアセスメント結果の周知と記録の保存

リスクアセスメントを実施した結果と、その結果に基づいて事業者が講ずる措置の内容等は。関係労働者に周知しなければなりません。また、その記録を作成し、次のリスクアセスメント実施までの期間保存しなければなりません。

 

③化学物質管理者の選任と化学物質管理専門家の助言

リスクアセスメント対象物質を製造、取扱い、または譲渡提供する事業場(業種・規模要件なし)は、化学物質管理者の選任が必要です。化学物質管理者は、リスクアセスメントの実施管理や、リスクアセスメント対象物の製造事業者の場合は、ラベル・SDSの作成等が職務となります。

労働災害が発生またはそのおそれのある事業場は、労働基準監督署長の判断で改善を指示されることがあります。その事業者は、化学物質管理専門家から助言を受けた上で、改善計画を作成し、労働基準監督署長に報告し、改善措置を実施しなければなりません。

 

図3.化学物質管理専門家の位置付け
(出典:化学物質による労働災害防止のための新たな規制についての概要資料)

 

④職長等に対する教育義務業種の拡大

対象業種の事業者は作業中の労働者を直接指導または監督する者(職長等)に対し、安全衛生教育を行われなければなりません。その対象業種に、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業及び食料品製造業(一部は以前から)が追加されました。
その理由として、図4に示すように、食料品製造業において化学物質による災害が多いこと、2012年の大阪での印刷事業場での胆管がんによる災害発生があります。

 

図4.化学物質の業種別災害件数
(出典:厚生労働省の改正する省令案の概要資料)

 

 


[1] 化学物質による労働災害防止のための新たな規制について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

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