
これまでG7とG20の首脳サミットは、各国のGHG排出削減目標等に大きな影響を与えてきたが、
2025年にも同様に進むだろうか?
背景
2025年のG7首脳サミット[i]は、6月にカナダのアルバータ州カナナスキスで開催される予定です。G20首脳サミット[ii]は、11⽉に南アフリカのハウテン州で開催される予定です。これまでG7およびG20では環境問題、特に気候変動対策に関して、様々なことを合意してきました。
一方で2025年の11月に行われる国連気候変動枠組条約第30回締結国会議(COP30)では、締結国が2025年2月10日までに国連へ提出することになっていた2035年までの各国の気候変動対策目標(NDC)に関しての重要な議論が行われる予定です。
ウクライナやガザその他の紛争に加え、今年は米国トランプ政権による関税問題など国際的な問題は拡大しています。このような状況の中、G7とG20において気候変動問題など環境問題について有効な議論・合意がなされるでしょうか。
G7首脳サミットの状況について
環境・エネルギー大臣会合が首脳サミットとは別に行われていますが、今のところ環境・エネルギー大臣会合は計画されていないようです。
2月24日にG7首脳テレビ会議、3月12日~14日にG7外相会合[iii]が行われ、5月20日~22日にG7財務大臣・中央総裁会議が予定されています。
首脳テレビ会議および外相会合の主な議題に環境問題は含まれていませんでした。
カナダのG7公式サイト[iv]には、「G7議長国として、カナダは世界的な安全保障・経済危機、健康問題、開発課題に対処するための革新的なイニシアチブを開発することにより、世界的なリーダーシップを発揮してきました。また、民主主義、サイバーセキュリティ、海洋、危機的状況下での女性と少女の教育など、野心的な優先事項の進展も促しました。」と記載されており、気候変動や環境問題についての記載はありません。
G20リオデジャネイロ首脳サミット(2024年)について
2024年11月18日・19日にブラジルで行われたG20リオデジャネイロ首脳サミットでは、3つの優先事項のひとつに「持続可能な開発、エネルギー移行及び気候行動」が挙げられて議論が進められました。首脳宣言[v]には、気候変動に関して「気温の上昇を1.5℃に制限するための努力を追求することへの決意」、「GHG排出量のネット・ゼロ又はカーボンニュートラルへのコミットメントを前進させる」や「COP28の成果、特にパリ協定の第1回グローバ ル・ストックテイクを歓迎し、全面的に支持する」などが盛り込まれました。2024年11月11日~24日にアゼルバイジャンのバクーで行われたCOP29を後押し影響を与えました。
G20南アフリカ首脳サミットの状況について
G20南アフリカ首脳サミットは、2025年11⽉22⽇・23⽇に南アフリカのハウテン州で行われます。「エネルギー転換」と「環境と気候の持続可能性」を含めた15の作業グループで検討が進められています[vi]。
エネルギー転換については、ワーキンググループ会議が、2⽉27⽇〜28⽇と4⽉30⽇〜5⽉2⽇に行われ、今後7⽉29⽇〜31⽇と9⽉23⽇〜25⽇に行われ、エネルギー転換ワーキンググループ閣僚会合が9⽉26⽇に行われる予定です。
気候と環境の持続可能性については、ワーキンググループ会議が3⽉25⽇〜28⽇に行われ、今後7⽉14⽇〜18⽇と10⽉13⽇〜15⽇に行われ、気候と環境の持続可能性ワーキンググループ⼤⾂会合が10⽉16⽇〜17⽇に行われる予定です。
11月10日から21日にブラジルのベレンで行われる予定のCOP30には大きな影響があると思われます。
まとめ
気候変動や環境問題に関する議論や合意は、G7首脳サミットでは少ないかもしれませんが、G20首脳サミットでは事前に十分な準備が行われるようなので、COP30に与える影響は大きいと思われます。今後の動向に注視したいと思います。
[i] G7サミット(主要国首脳会議)は、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ(議長国順)の7か国及び欧州連合(EU)の首脳が参加して毎年開催される
[ii] G20サミットは1999年から年1回の頻度でフォーラムが開催され、G7の7ヶ国以外にアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、EUがメンバー
[iii]G7外相会合共同声明(外務省仮訳) 100813409.pdf
[iv] Canada’s 2025 G7 Presidency
[v] G20リオデジャネイロ首脳宣言(外務省仮訳)100757896.pdf
[vi]G20南アフリカ会議サイト Sherpa Track – G20 South Africa