EHS総合研究所

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〈EHS研究所 コラム24〉「EU安全で持続可能な設計(SSbD)の枠組の確立」


2023年2月6日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

EU安全で持続可能な設計(SSbD)の枠組の確立

EUはグリーンディールの下、カーボンニュートラル、

生物多様性の保護、循環経済、汚染ゼロは一連の活動

中でも化学物質と材料に関して、エコデザインによる達成を

 

 

背景

2022年8月のコラム18で「無毒環境に向けた持続可能な化学物質戦略」(CSS: Chemicals Strategy for Sustainability -Towards a Toxic-Free Environment)について記載しました。その後EUでは、2022年12月8日に「化学物質と材料に関する「安全で持続可能な設計(SSbD: safe and sustainable by design)の評価枠組の確立」[i]と題する委員会勧告が発行されました。

SSbDに関しては、欧州化学工業連盟(Cefic)より、2021年10月に「SSbD: 欧州の化学産業におけるイノベーションと成長の促進」[ii]、2022年4月に「SSbD: 革新の力」[iii]の報告書を発行しています。EUでは政府と化学業界が、化学物質に関して、設計段階からの適切な対応により、安全で持続可能な社会を形成するとの考えのようです。

 

 

委員委勧告のポイント

委員会勧告「SSbDの評価枠組みの確立」の前段には、いくつかの記載がありますが、特に下記が注視すべき点かと思います。

 

・欧州グリーンディールは、持続可能な経済と社会への移行に向けて、相互に関連する4つの政策目標を設定している。それは気候中立性、生物多様性の保護、循環経済および無毒な環境のための汚染ゼロの目標。

 

・この枠組みは、グリーンな産業への移行を追求するイノベーションの世界的な基準となることを目指すべきである。懸念物質の製造と使用を可能な限り代替するため; 化学物質と材料の生産のための持続可能な資源と原料の使用を促進するため; 化学物質と材料の生産と使用が、そのライフサイクルを通じて、気候、環境、および人間の健康に与える影響を最小限に抑えるため; 業界および公的機関の R&I 投資を正しい方向に導くため

 

・この勧告は、このテスト期間中の加盟国と利害関係者のための自発的な報告メカニズムを備えた枠組みのテスト期間を設定する。枠組みの改訂プロセスは、遅くともテスト期間の終わりまでに開始される。

テスト期間中に収集されたフィードバックに基づいて、委員会は、関連する場合、追加の側面として経済的および社会的持続可能性側面だけでなく、追加の安全性および環境側面を評価に含めることを検討する。

 

この勧告の「目的と範囲」には、次が記載されており、詳細は付属書[iv]に示されています。

 

「この勧告は、R&I 活動のために、「設計により安全で持続可能な」化学物質と材料のための欧州の枠組みを確立することを提案しています。 委員会の共同研究センターからの技術報告書に基づくテスト期間とフレームワークの詳細は、この勧告の付属書に記載されています。」

 

付属書には、次のような各ステップでの評価の詳細等が示されています。

ステップ 1 – ハザード評価

ステップ 2 – 生産と加工における人の健康と安全の側面

ステップ 3 – 最終適用段階における人間の健康と環境の側面

ステップ 4 – 環境の持続可能性評価

 

各評価の中では、ライフサイクル全体の評価を行うこととされ、LCA(ライフサイクルアセスメント)、環境フットプリントなどの評価が示されています。

また、付属書の中には、評価を簡素化し、データの収集を容易にし、研究開発プロセスの早い段階で問題のある化学物質や材料をより迅速に排除することを目的するなどが示されています。

 

 

今後について

EU内での専門家やNGOの報告書などで、REACH規則とCLP規則の課題として、SVHC(高懸念物質)や制限物質に選定されるまでに時間を要し、その間にEUの環境や人が化学物質汚染に曝されることが危惧されています。

 

今回の勧告においても、化学物質の評価を早め、EU市場の化学物質による汚染をゼロにするというCSSの狙いの達成があります。勧告による評価の試行期間を経て、REACH規則とCLP規則での規制物質の評価方法が見直されることが予想されます。

 

勧告の位置づけは法的拘束力のあるものではありませんが、各国政府、試験機関だけでなく、中小企業を含めた企業に推奨されるものとなっています。今後、どのように運用されるかと、試行期間の経過と共に見直される規制等の動向に注視する必要があると思います。

 

[i] Commission recommendation – establishing a European assessment framework for safe and sustainable by design.PDF (europa.eu)

[ii] Safe-and-Sustainable-by-Design-Report-Boosting-innovation-and-growth-within-the-European-chemical-industry.pdf (cefic.org)

[iii] Safe-and-Sustainable-by-Design-Guidance-A-transformative-power.pdf (cefic.org)

[iv] Commission recommendation – establishing a European assessment framework for safe and sustainable by design – annex.PDF (europa.eu)

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