EHS総合研究所

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〈EHS研究所 コラム26〉「労働安全衛生法の新たな化学物質規制に関して多くが施行開始」


2023年4月10日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

労働安全衛生法の新たな化学物質規制に関して多くが施行開始

昨年改訂された労働安全衛生法の新たな化学物質規制の多くの部分が、

4月1日から施行されています。企業の方々は対応を開始しているでしょうか。

 

 

背景

労働安全衛生規則等の改訂については、昨年5月31日に公布されました。昨年6月に当コラムでも内容を紹介しました。改訂部分の多くは2023年4月1日から施行となり、法的に対応が必要となっています。2月10日に、労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質のばく露の濃度の基準等の検討を進めている「化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書[i]が発行されました。その報告書の検討の趣旨として、次の記載があります。

 

今般、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれる。さらに、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く。)のうち、特定化学物質障害予防規則等の特別則の規制の対象となっていない物質を起因とするものが多数を占めている。

 

今回の改訂の趣旨は、規制対象でない化学物質によって、多くの労働災害が発生していたことを、今後抑制することです。労働災害の発生は、被災された従業員はもちろんですが、企業の経営に与える影響も小さくありません。規制があるからではなく、化学物質によるリスク回避のために、法律を遵守することを進めることが望まれます。

 

 

2023年4月1日から対応が必要な主なもの

規制追加項目は、前回も示した下表のとおりです。その中でも早期に進められることを紹介します。

 

図1.新たな化学物質規制項目の施行期日

(出典:化学物質による労働災害防止のための新たな規制についての概要資料)

 

①衛生委員会付議事項の追加(衛生委員会設置義務のない事業場も対象)

衛生委員会の付議事項に、次の事項を追加し、化学物質の自律的な管理の実施事項の調査審議を行うことが義務付けられました。これに関しては、労働者が少なく衛生委員会の設置義務のない事業場も、関係労働者からの意見聴取の機会を設けなければなりません。

 

a.労働者が化学物質にばく露される程度を最小限度にするために講ずる措置に関すること

 

b.濃度基準値の設定物質について、労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とするために講ずる 措置に関すること

 

c.リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講ずるばく露低減措置等の一環として 実施した健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること

 

d.濃度基準値設定物質について、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときに実施した 健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること

 

aについては、2023年4月1日 (他の項目は2024年4月1日)から実施しなければなりません。

これを実施することにより、化学物質管理に関して、経営者と従業員が必要事項を再認識する良いきっかけとなりますので、まだ実施できていない事業者は、早期に実施されては如何でしょうか。

 

②対象物質の増加

ラベル表示等の義務対象物質は毎年度増加し、図2のようなスケジュールで増加します。濃度基準が定められているものは前述の「化学物質管理に係る専門家検討会」で検討され、今年度から追加されるものは、まもなく決定するようです。

 

 

図2. 国によるGHS分類およびラベル表示等の義務化スケジュール

(出典: 労働安全衛生総合研究所「「よむ」化学物質の管理がかわります!」[ii])

 

作業者の健康被害の防止のためには、経営者は、使用する化学物質が法規制の対象であるかに係わらず、対応することをお勧めします。

 

 

[i] 「令和4年度化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書を公表します (mhlw.go.jp)

[ii] 「よむ」化学物質の管理がかわります!

 

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