EHS総合研究所

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〈EHS研究所 コラム30〉「SDG’sは進んでいるか?」


2023年8月3日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

SDG’sは進んでいるか?

SDG’s は多くの企業が取り組んでいますが、
本当に成果は上がっているでしょうか。ゴールは遠ざかっているのでは。

 

 

背景

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)は,2015 年9 月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」に記載されました。2030 年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で、17 のゴール・169 のターゲットから構成されています。日本では多くの企業がSDGs への取り組みをアピールしています。

ほとんどの企業と言っても良いかもしれません。2025 年に開催される大阪・関西万博は、開催目的に”EXPOfor SDGs”i、SDGs を2030 年までに達成するためのプラットフォームになるとまで記載されています。

 

 

しかし、SDGs が盛り上がっているのは、日本と連だけだとの報道があります。一方では、SDGs の達成度ランキングでは、日本は毎年ランクが下がっています。また、G7 広島サミットの「首脳コミュニケ」では、SDGs の取り組みが後退していることを認識されています。SDGs ウォッシュiiとの批判も聞かれるようになってきています。SDGs に関して、実情はどうでしょうか。

 

 

 

SDGs への関心の高さ

表1.GeogleTrends による検索ランキング(2022 年7 月31 日から1 年間)

1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
日本 インドネシア 台湾 ジンバブエ ウガンダ ケニア ガーナ タイ ナイジェリア 韓国
100 31 30 27 19 15 14 8 7 7

※ web 検索数で1 位を100 とした指数

 

一部の報道でSDGs に関心が高いのは日本だけで、欧米では関心が高くないという記事が見られました。

 

そこでGeogle トレンドで最近1 年間の「SDGs」のweb での検索数を調べてみると、表1 のように、日本が抜きんでて1 位でした。10 位内に先進国はなく、英国が25 位、米国が34 位という結果でした。

 

ちなみに「ESG」では日本は25 位なので、日本だけがSDGs に異様に関心が高いのは事実のようです。

 

 

 

日本のSDGs の達成度評価

持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)は2023 年6 月21 日、世界各国のSDGs の達成度を評価した「Sustainable Development Report」iii(持続可能な開発報告書)の2023 年版を発表しました。日本は21 位に後退しました。

 

日本は2017 年の11 位をピークに毎年少しずつ下がっています。日本は、次の5 つのゴールに深刻な課題があるとしています。

目標5「ジェンダー平等」

目標12「つくる責任、つかう責任」

目標13「気候変動対策」

目標14「海の豊かさを守ろう」

目標15「陸の豊かさを守ろう」

 

また、次のゴールについても重要な課題があるとしています。

 

目標2「飢餓をゼロに」

目標7「手頃な価格でクリーンなエネルギー」

目標8「働きがいと経済成長」

目標10「不平等をなくす」

目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

 

G7 広島サミットでのSDGs の認識

G7広島首脳コミュニケには、SDGsに関して、様々なところに達成に向けた決意が記載されています。

その中でも、SGDsの進捗度に関して、次の記載があります。

「我々は、SDGs達成に向けた進捗の後退を反転させるために、主導的な役割を果たすことを決意する。

 

我々は、2023年がSDGs達成に向けた折り返し地点であることを認識しつつ、9月のSDGサミットの重要性を強調し、成功に向け野心的に貢献する。」SDGs の取り組みが後退していることと、今年が折り返し点であることの認識が示されています。

 

 

 

G7 広島サミットでのSDGs の認識

G7広島首脳コミュニケには、SDGsに関して、様々なところに達成に向けた決意が記載れています。

その中でも、SGDsの進捗度に関して、次の記載があります。「我々は、SDGs達成に向けた進捗の後退を反転させるために、主導的な役割を果たすことを決意する。

 

我々は、2023年がSDGs達成に向けた折り返し地点であることを認識しつつ、9月のSDGサミットの重要性を強調し、成功に向け野心的に貢献する。」SDGs の取り組みが後退していることと、今年が折り返し点であることの認識が示されています。

 

 

SDGs ウォッシュ

2017 年のOECD の「責任ある企業行動に関するグローバルフォーラム」においてSDGs ウォッシュという言葉で出たと、作業部会の議長のロエル・ニューウェンカンプが記していますiv。SDGs の一部に対する貢献を売り込み、SDGs の他への悪影響を無視する企業のことを指すとしています。

 

日本では、最近はSDGs の一部目標に対しても、ほとんど貢献していないにも関わらず、SDGs の活動に取り組んでいると発信している例も見受けられます。SDGs の169 のターゲットは、ほとんどが国に対するものですので、それに対して企業の目標を設定するのは難しいです。

 

しかし、SDGs ウォッシュと非難されることを避けるには、どのゴール・ターゲットに対して、どのような貢献をするのか考える必要があるでしょう。

 

例えば教育機関でない企業が、ゴール4「質の高い教育をみんなに」に取り組むとしたら、ターゲット 4.4「2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇 用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。」を対象にするのでしょう。

 

そして、どのように貢献できるか考えるのが望ましいでしょう。SDGs の他のゴールに対して、大きな負の影響を与えていないかも考慮すべきでしょう。

 

 

 

まとめ

日本のSDGs の取り組みは、盛り上がっているようですが、実際は心もとない状況です。次の2 点で誤解があると思います。

 

ひとつは、「社会貢献活動=SDGs の活動」と安易に考え、一人ひとりの行動に委ねられているのだから、すべての人ができることから進めることが大切だとし、社会貢献活動を、SDGs の目標への活動として表していることです。社会貢献ではなく、ビジネスなしにSDGs の達成は不可能なことは明らかです。

 

もう1 点は、「持続可能な開発目標」に関して、「開発を持続して実施いくための目標」と誤解されていることがあります。実際に意図するものは「持続可能な未来を創るための開発目標」です。SDGs は今のビジネスの延長で考える限り達成は困難でしょう。

 

SDGs の達成に貢献できる新たなビジネスを進めることが重要です。それが投資を誘発し、事業に貢献することになると、前向きに考え、進められることを期待します。

 

i 開催目的 | 公益社団法人 2025 年日本国際博覧会協会 (expo2025.or.jp)

ii 実態を伴わないSDGs をうたった取り組み

iii sustainable-development-report-2023.pdf

iv Ever heard of SDG washing? The urgency of SDG Due Diligence – Development Matters  (oecd-development-matters.org)

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